Real Fish Eye Lens Project

Real Fish Eye Lens Project

『Real Fish Eye Lens Project』(4.2021) 工作(カメラ機構、鮮魚レンズマウント)、写真、冊子

新鮮なサカナの水晶体を取り出し、その水晶体をレンズとして結像するように、カメラマウントを自作し撮影を実験する制作である。

 カメラのフィルターとしてではなくレンズ(水晶体)として結像できるように、網膜部分の役割を果たすスクリーン・撮像センサーもしくはフィルムと、水晶体の距離を調整する実験をする。しかし、魚の水晶体は、球状に近いという性質上、焦点距離が短く、採集できる光量が少ない。そのため、結像するための光を集めるために、「絞りを与える装置」「ある程度感度の良いセンサー」が必要になり、結像するための焦点距離を合わせるために、「そのセンサーと各々の魚の眼の焦点距離が合わせる装置」が必要になり、それらを満たしたレンズマウントを制作することとなった。また、魚が生きていく上で老化による白内障、魚が死んでから腐敗によるもの、特に一番速度を持って眼球内の房水から水晶体を取り出すと時間経過と共にすぐに濁ってしまうため、鮮明に撮影できる時間は限られている。触れると曇ってしまうことや室温や湿度など撮影環境も、タンパク質の変性に影響するため、鮮明な賞味期限は15分から30分程度であった。つまり焦点距離を即興で探しながら素早く試せるようにする必要がある。撮影から現像までに時間のかかるフィルム撮影であると、結果がわかる時には、水晶体にとって遅く、その水晶体と環境に対して時間が不足するため、実験にとって、デジタルの素早い結果がわかることが重要であった。厚みと直径を0.01ミリ単位で異なるレンズマウントを用意する。様々な魚を用いて実験を繰り返した。2週間で20匹の1匹につき2つの水晶体で失敗した。使用したカメラボディはSonyのNEX-3を3台、NEX-5を2台、α7Rを1台、α6000を2台である。使用したサカナは、カサゴ、サワラ、マダイ、メバル、ニシン、キンメダイ、アジ、イシモチなどである。この中で、キンメダイに可能性を感じたので、キンメダイを中心に実験することとした。

 また、サカナの水晶体のカタチはずっと球形のまま、私たちヒトのように厚くなったり薄くなったりはしない。遠いモノと近いモノを見るために、水晶体の位置を前後にずらすことによってピント調節を行うようだ。そのため、撮影の際は、ヒトの眼よりもかなり短いフォーカス距離で撮影する必要がある。因みに視力はおおよそ0.10.2だと言われている。その代わりに、敵や餌を察知するために、球体の水晶体が体から飛び出るようについた眼球の持つ視野角はかなり広い。つまり、「よく見える」範囲は狭く、「ぼんやり」見える範囲は広くなる。因みに私は近視なので、見え方の「ぼんやり感」は金目鯛に近いのかもしれない。

 このように、制作する段階でも、カメラの仕組み=目の仕組み、引いては生物の仕組みについても、実験を重ねながら学ぶことができる。そしてさらには、金目鯛の水晶体が観ている世界を観ることに近づけたのかもしれない。そして、その水晶体を通して視覚を追体験することはその視覚を知ることであり、その生態系を知ることであり、そうして、その好奇心によって誰かには、学びや美しさを超える何か新しい体験する瞬間が現れるのかもしれない。

 魚の目であなたは何を見ますか?

Real Fish Eye Lens Project
‘Real Fish Eye Lens Project’ (4.2021)
Craft (camera mechanism, fresh fish lens mount), photograph